Alibaba Cloud Model Studio を使ってみる #6

Alibaba Cloudが提供する強力な生成AIプラットフォーム「Model Studio」について紹介するシリーズ記事です。

前回記事では 、Model Studio を日本リージョンで利用する場合の注意事項を紹介しました。

今回の記事は Model Studio の Qwen を WordPress 環境のトラブルシューティングに使ってみる話です。 このブログサイトは Alibaba Cloud の Elastic Compute Service (AWS でいうと EC2、Azure でいえば Virtual Machine)の仮想マシン上に Ubuntu、Apache、PHPで WordPress 環境を構築しており、そのトラブルシューティングとなります。

まあ、そんな大きなトラブルということはなく、WordPress で確認した以下の警告の解消となります。

「警告 オプションのモジュール imagick がインストールされていないか、無効化されています。」

そしてこの記事で伝えたいことですが、Qwen が問題解決に優れている!ということではなく(優劣は評価軸や手法の設定が難しいし、そもそも今回は簡単な問題解決なので優劣をつける話ではない)、有償のToken Planを利用する中で Text での問答がどのくらいトークンを消費するのかという実測値の紹介と、終わった後の話としてどうすればより効率的にトークンを消費できたかの考察をお伝えしたいと思います。

そして、Model Studioでは一回一回のやりとり毎に消費されたトークンと利用可能なトークンが画面上で確認できるというユーザにとってうれしいUIであることも最初にアピールしておきます。 

以下の感じで、AIからの応答後に Input と OutputのToken数が表示されます(InputとOutputの合計が消費トークン)。 そして、次のプロンプトの入力フォームには Free Quota の使用状況を確認することが可能です。 

結論: Model Studio (Qwen)で解決できた!

Alibaba Cloud Model Studio(Qwen3.8)に WordPress のサイトヘルス警告の解決を依頼したところ、無事に解決できた。

問題としては軽微なもので生成AIに頼らずとも自分自身でも解決できた類いのものではありますが、使わないよりは使った方が断然に楽できるというのが感想となります。

なお、最初のプロンプトが曖昧だったため、余計な往復とその結果のトークン消費が発生しました。もっと効率よくやれたはず、という反省も含めてトークン消費結果を記録に残します。 

消費したトークン

結果、約25,000トークンを消費しました。

項目
往復数9往復
入力トークン19,438
出力トークン4,931
合計トークン24,369

9回の往復(わたしとQwenの問答)ごとの消費トークンを Input と Output で整理した表が以下です。 生成AIの特徴でもありますが、Input のトークンは積み上がっていくことはわかります。 積み上げがなければInputとOutputの1回の問答では1000以下の消費なので、すごくざっくりいえば、問答を1回ないし2回で完了できれば2000以下のトークン消費で済無という話です。

往復数InputOutput小計
1回目66208274
2回目226694920
3回目7984641262
4回目15129242436
5回目20658022867
6回目30263313357
7回目33878084195
8回目38784364314
9回目44802644744
小計19438493124369

Model Studio (Qwen) とのやりとり

無駄なトークン消費を過程を知れるようやりとりを紹介します。 伝えたいことは具体的なプロンプトの内容ではなく、9回もQwenと会話のやりとりを行った過程の概要です。  このやりとりをどう減らせるかについても後のセクションで言及します。

Round 1:メッセージを貼り忘れる

私から Qwen への指示文(プロンプト)

Ubuntu 環境上でWordPressを利用しています。 WordPressのサイトヘルスから以下のメッセージ。 このメッセージの意味するところと対処方法を教えて。

問題が起きている環境についてはほとんど情報を与えておらず、キャッチボール前提の指示文。

そして、WordPress のサイトヘルスに表示された警告について質問したつもりだったが、メッセージ本文を貼り忘れていた。

Qwen:「メッセージが記載されていません。実際のメッセージ内容が投稿に含まれていないようです」

当然である。1往復文のトークンを無駄にした。

Round 2:メッセージを貼る → 一般的な対処法が返ってくる

警告メッセージ「警告 オプションのモジュール imagick がインストールされていないか、無効化されています。」を貼り付けると、imagick の役割と一般的なインストール手順を回答してくれた。

sudo apt install php8.1-imagick

しかし、この手順では解決しなかった。私の環境は PHP 8.1 ではなく、しかも Apache 側と CLI で PHP のバージョンが異なっていた。

また、トークンを無駄にした。

Round 3,4:環境情報を提示する

Qwen に聞かれるがまま、OS・PHP・Web サーバーの情報を提示した。

Ubuntu 22.04 / PHP 8.5 (CLI) / Apache 2.4.68 / WordPress 7.0.3

Round 5,6:Qwen の推測が外れる

Qwen は /etc/php/8.5/apache2/conf.d/ の確認を指示してきたが、そのディレクトリは存在しなかった。

私が「そのディレクトリは存在しない」と指摘すると、Qwen はすぐに方針を修正した。

Round 7:コマンドのタイポ

確認コマンドを実行する際、パイプとスペルを間違えた。(原因はコピーペーストしたらパイプがペーストされなかった)

Qwen はこのタイポも指摘してくれた。地味だが助かる。

しかし、また、トークンを無駄にした。

Round 8:Qwen が核心に辿り着く

dpkg -l の結果を見て、Qwen が本質的な矛盾を指摘した。

「CLI は PHP 8.5 ですが、Apache 用には PHP 8.3 と 8.4 の mod-php しかインストールされていません」

さらに apache2ctl -M で確認したところ、Apache は PHP 8.4 で動作していた。

つまり:

  • CLI → PHP 8.5(imagick 有効)
  • Apache → PHP 8.4(imagick 未インストール)

これが原因だった。

Round 9:解決

apt install php8.4-imagick
phpenmod -s apache2 -v 8.4 imagick
systemctl restart apache2

Qwenから案内された手順を実行。 WordPress のサイトヘルスを確認すると、警告が解消されていた。

考察:もっと効率よくやれたか?

実際に行った最初のプロンプト

WordPressのサイトヘルスから以下のメッセージ。このメッセージの意味するところと対処方法を教えて

これだけである。環境情報なし、前提条件なし。

もし最初からこう書いていたら

最初から必要な情報を提示していれば1回の往復で問題解決は出来た可能性はある。 追加でもう1回確認したとしても今回のケースであれば2回で解決出来たと十分に言える。

Ubuntu 22.04 / Apache 2.4(mod_php)/ WordPress 7.0.3 Apache は PHP 8.4 で動作中。CLI は PHP 8.5。 サイトヘルスに「オプションのモジュール imagick がインストールされていないか、無効化されています」と警告が出る。 php -m では imagick が表示されるが、Apache 側では無効のようだ。 原因と対処方法を教えて。

仮説:トークン消費の比較

9往復が2往復へ、2往復のトークン消費をちょっと大目に見ても2000トークンとした場合、約90%もトークン消費を削減できたと考えられる。 言い換えると、私はとても無駄に消費してしまったと反省。  Free Quota 100万トークンの範囲であるが、自分のお金というよりはクラウド上の計算リソースを無駄遣いしているということの反省である。

シナリオ往復数トークン消費(概算)
実際のやり取り9往復25,000トークン
改善版プロンプト2往復2,000 トークン
削減率−89%−92%

学んだこと

  • AI は環境の固有事情までは推測できない
  • 「何を聞きたいか」だけでなく「前提条件」を最初に渡すのが重要
  • 曖昧なプロンプトはトークンの浪費に直結する
  • とはいえ、曖昧な質問からでも段階的に正解に辿り着けるのは AI の強みでもある

まとめ

システム運用に普段から生成AIを利用していたこともあり Qwen も問題なく解決できるだろうという予測のもと今回の作業をを行い、その予測通りに問題解決に成功した。 結果的には自分が最初に想定していなかった CLI と Apache の PHP バージョン不一致を Qwen は簡単に見つけることができた。

PHP や Image Magick の一次ソースなどの情報を自分で調べる方法でもいずれ解決できたかもしれないが、「対話しながら切り分ける」方が、自分の状況に合った解決策を短時間かつ実践的な情報で得られることを確認できた。

そして、普段の自分はいかに無頓着にクラウド上の計算リソースを消費しているのか気づかされるものであった。  知識としては、やりとりが増えれば増えるほどINPUT が積み上がることや敬語や挨拶、感謝の言葉なども無駄なトークン消費につながるということは知っていたが、いざ自分のお金で買ったトークンを消費する、そしてその一問一答ごとに消費トークンが Model Studio では見える化されたことで、初めて無駄を実感できたということです。  仕事で使っている生成AIも使い方を工夫、改善しようとも思いました。

参考:WordPress「imagick がインストールされていない」の解決策

原因

CLI と Apache で PHP のバージョンが異なり、Apache 側のバージョンに imagick がインストールされていなかった。

確認手順

# Apache が使う PHP バージョンを確認
ls /etc/apache2/mods-enabled/ | grep php

# 該当バージョンに imagick がインストールされているか確認
dpkg -l | grep php8.4-imagick

解決手順

sudo apt install php8.4-imagick
sudo phpenmod -s apache2 -v 8.4 imagick
sudo systemctl restart apache2